MBA受験を振り返って、当時の自分に一番伝えたいのは「情報の集め方」です。テストの点数やエッセイの完成度ももちろん大切ですが、それ以上に「自分に本当に合う学校をどう見極め
るか」「限られた時間をどこに使うか」で、受験の質は大きく変わります。
この記事では、MIT Sloanを卒業した私が、受験期に知っておきたかったことを、学校選び・Campus Visit・M7ランキング・GMAT/GRE・エッセイの自己分析という5つの切り口でお話しします。前回の総論記事の「勘違いしていた10のこと」のうち、受験に関わるテーマを一段深く掘り下げる回です。
▶ 関連記事:シリーズ総論はこちら → 「入学前に勘違いしていた10のこと」(記事①)
学校ごとにカルチャーは、想像以上に違う
同じ「MBA」と一括りにされますが、学校ごとのカルチャーは想像以上に違います。これは提供されるカリキュラムや授業の違いだけではありません。そもそも、そこに集まる学生の特徴や、そこから生まれる学校全体の空気感が違うのです。
たとえばMIT Sloanは、他校に比べてパーティーが控えめで、落ち着いた人が多いことで知られています(それでも日本の基準で見れば、イベントは圧倒的に多いのですが)。また、学生同士の競争をあまり強く煽らず、むしろ「Sloanies helping Sloanies」——スローニー(Sloan生)がスローニーを助ける——という言葉に象徴されるように、在校生もOB・OGも、Sloanというコミュニティにいる限りは非常に協力的でした。もっとギスギスした雰囲気を想像していたので、周りが本当にsupportive(協力的)で驚いたのを覚えています。
だからこそ、Campus Visitと在校生との会話をおすすめします
こうした空気感の違いは、正直なところ、現地に足を運んで在校生と話してみないと分かりません。だからこそ、可能であれば入学前のCampus Visit(キャンパス訪問)を強くおすすめしたいですし、在校生と直接会話する機会をつくってほしいと思います。多くの学校には、日本人有志による日本人受験生向けのサイトがあるので、そこから連絡を取れば、いつでも在校生と話すことができます。
私自身のCampus Visit(コロナ前に実施)で特に印象深かったのは、Whartonです。現役のMBA生がつきっきりでキャンパスを案内し、授業にも付き添ってくれた上、無料の食事クーポンまで配ってくれました。「自分はなぜMBAに来たのか」「良かった点・悪かった点」を赤裸々に話してくれて、最後はLinkedInまで交換する、非常に実りある訪問になりました。一方で、ある学校は授業を1コマ見学して終わり、という“流れ作業”の印象で、対応の差をはっきり感じました。ちなみにMIT Sloanは、授業見学に加えて、現役学生数人に質問できるランチセッション(ランチボックス付き)のような形式で、こちらの本音ベースの質問にもしっかり答えてくれて好印象でした。
在校生になって分かった、Campus Visitの“ちょうどいい”タイミング
実際に学生側になって気づいたのですが、キャンパスビジットで授業に参加してくる人(友人や親御さんも含めて)は意外と多く、正直、来ても誰も気にしていません。日本人向けサイト経由で受験生と直接お会いしたことも何度もあります。狙い目は学期の中盤あたり。学期の始めは在校生も全員出席して席が足りないことがあり、期末やテスト前は皆忙しくて対応が難しくなりがちです。
「M7」は海外でも通じる。ランキングの実態
日本では「M7」(HBS、スタンフォード、ウォートン、MIT Sloan、Booth、Kellogg、コロンビアの総称)という括りがひとり歩きしていて、私は「これは日本特有の表現なのでは」と思っていました。ところが実際にアメリカへ行くと、M7はMBAコミュニティの中で普通に通じる表現で、しかも日本人以外の学生もかなり気にしていることを知りました。
入学後は「どこを受験した」「どこを蹴った」という話になりやすく、必然的にランキングの話題もよく出ますし、ジョークのネタにもなります。たとえば、Sloan同級生のWhatsAppグループで「誰かハーバードの授業の抽選に受かった人いる?」(MITとハーバードには単位互換制度があり、お互いの授業を受講できます)という質問が出たとき、「ここにいる人は受験時に全員HBSに落ちているよ」という返信が来る、といった具合です。教授がネタにすることもあり、M7以外から来た教授が自己紹介で「君たちが全員蹴ったであろう“〇〇”で教えていた」と笑いを取る場面もありました。
でも「出口(就職)」の差は、思ったより小さい
では学校名で就職が決まるかというと、そうでもありません。いざ就職活動を始めると、一般的な就職先——コンサル、テック系のPM職、メーカー等の事業戦略(Corporate Strategy)職——では、M7とその他のトップ校(Haas、Duke、Dartmouthなど)とで、そこまで大きな差があるようには思えませんでした。実際、米国企業の戦略職の面接では他校の就活生にもよく会い、幅広い学校から選抜されている印象でした。逆に言えば、「学校の知名度」だけでアメリカで就職できるわけではなく、結局は入学後の努力次第だということです。
ただし、話を聞く限り、一部の金融機関(特にPEやファンド)では、採用校をかなり絞ってリクルーティングを行っているようです。とはいえ、これは「M7か否か」というより、その学校特有の採用ネットワークがあるかどうかの違いです。ランキングそのものに過度に一喜一憂する必要はない、というのが私の実感です。
GMATかGREか問題
私たちの受験時は、まだ「MBAのAdmission(入学審査)チームはGMATよりGREを優先している」という、根拠のない噂が広まっていました。ですが入学後、GREで受験した人も一定数いることを知りました。おそらく、ある程度のスコアが取れていることが分かれば、GMATでもGREでも本当に気にしていないのだと思います。実際、HBSでも最新の入学者の4割以上がGREのスコアで受験したと聞いています。
もし今の私が受験するなら、GMATとGREの両方を受けてみて、自分に合ったほうを選んで提出すると思います。GMATに固執するあまり、当時はかなりのプレッシャーになっていました。多少の向き不向きはあるので、両方試して、より良いスコアが出るほうを出す——それで十分だと思います。
GMATのスコアと、入学後の実力は相関しない
GMATのスコアは、入学後も意外と話のネタになります。特に仲良くなると点数の話まで及ぶことがあり、具体的な数字を出さなくても「GMATの苦労話」はあちこちで飛び交っていました。中には、学業でパフォーマンスが振るわない人に対して「あいつはスコアを提出しなかったのでは」という、冗談か本気か分からない陰口が飛ぶこともありました。
ただ、GMATの点数と、授業での評価や就活での成果は、必ずしも相関しないと感じます。MBAで求められる力は、大きく分けると「①Analytical Skill(分析力・論理的思考力)」と「②Leadership Skill(リーダーシップ・マネジメント力)」の2つです。GMATはあくまで①を測る指標なので、MBAでの評価に直結するわけではありません。同じように「出身大学の知名度」も、MBAでのパフォーマンスとは直結しません。トップスクールにはIvy Leagueなど名だたる大学の出身者が多くて驚きますが、評価の高い学生が必ずしもそうした大学出身とは限らないのです(入学時に配られるプロフィールブックに全員の出身大学や前職が載っているので、本人が言わなくても分かります)。
エッセイを書く前に、「自分だけに矢印を向けた自己分析」を
これは受験期の自分に一番伝えたいことでもあります。エッセイを書く前に、徹底的に「自分だけに矢印を向けた自己分析」をしておくべきでした。
「自分はこういう経験をしているから、ここが優れている」という視点は、一度捨てたほうがよさそうです。そうではなく、「自分はこういう人間です。こういうことを大事にしてきて、そのうえで将来はこうしたい。だから、〇〇で〇〇したいのです」という、あくまで“自分”だけに矢印を向けた分析をするほうが、エッセイにも軸が通ります。スタンフォードのエッセイで問われる “What matters the most to you, and why?”(あなたにとって最も大切なことは何か、そしてそれはなぜか)ではありませんが、「自分とは何者か」を問い続けることは、受験時に限らず、入学後もずっと重要になります。
まとめ:戻れるなら、こうします
受験期に戻れるなら、私は2つのことをやり直します。ひとつは、もっと多くの学校の在校生に話を聞き、授業や受験の話だけでなく、その学校のカルチャーや空気感まで深掘りして理解すること。もうひとつは、GMATに固執せずGREも受けてみて、自分に合ったほうを提出することです。
受験は、合格がゴールではなく、その先の2年間を実りあるものにするための入り口です。次回(記事③)は、いよいよ入学後の話——「英語力よりコミュ力」というテーマで、授業やグループワークで評価される人の共通点をお話しします。
▶ 関連記事:次回 → 「MBAは英語力よりコミュ力」授業で評価される人の共通点(記事③)
よくある質問(FAQ)
Q. M7とは何の略ですか?
A. アメリカのビジネススクール上位7校(HBS・スタンフォード・ウォートン・MIT Sloan・シカゴBooth・Kellogg・コロンビア)の総称です。
Q. GMATとGREはどちらが有利ですか?
A. Admissionはどちらでも気にしていません。両方受けてみて、良いスコアが出たほうを提出するのがおすすめです。
Q. Campus Visitはいつ行くのがベストですか?
A. 学期の中盤が狙い目です。学期の始めは席が足りないことがあり、期末やテスト前は在校生が多忙になりがちです。
