MBA留学のリアルなお金と生活|授業外の出費・家族帯同・一生の友人【MIT Sloan】

MBA留学の「お金」というと、多くの方は学費を思い浮かべると思います。もちろん学費は大きな出費ですが、実際に2年間を過ごしてみると、家計に効いてくるのは学費以外の部分——特

に「授業外の出費」でした。そして意外にも、その出費こそが、MBA生活で最も価値のある時間を生んでくれたのです。

本連載の最終回となる今回は、MIT Sloanを卒業した私が、お金と家族、そして日常生活のリアルをお話しします。数字には表れにくい、けれど入学前に知っておきたかった「生活の実態」です。

関連記事:シリーズ総論はこちら → 「入学前に勘違いしていた10のこと」(記事①)

授業外の出費は思った以上。でも、そこにこそ価値がある

学費や家賃、日々の生活費に加えて、MBA生は少しでも時間が空くと、みんなでどこかへ遊びに行ったり、旅行に出かけたりします。特にボストンはヨーロッパにも近く、アメリカ国内外へ旅行する人が本当に多かったです。学生や学校が主催するTrek(スタディツアー)やStudy Tourも数多くあり、一部のツアーには学校からの費用補填もあります。

こうした「授業外で過ごす時間」こそが、MBA生活では非常に重要な意味を持つ、と私は感じています。というのも、こうした旅の中でこそ、「将来何をしたいか」「家族との関係」「本当はなぜアメリカのMBAに来たのか」といった、本音ベースの生々しい話が出てくるからです。

何十人もいる教室では決して話せない内容にこそ、自分の知らない世界が広がっています。他の人が心の奥で抱いている “What matters the most to you, and why?”(自分にとって最も大切なことは何か)が垣間見える瞬間でもあります。こうした会話こそがMBA留学の醍醐味であり、自分の知見を広げるチャンス。そして、四六時中同じ空間で旅をするからこそ、一生ものの友人関係を築けるのだと思います。現に、ともに旅した仲間とは今でもつながっていて、彼らが来日する際には必ず会う仲です。

早めにイベントへ顔を出しておくと、生活が変わる

クラブ活動の一環として費用を補填してくれるイベントや、ホームパーティーなども日常的に開かれます。懐事情にもよりますが、MBAの早い段階でこうした場に顔を出しておくと、自然と「顔が売れて」いき、その後の2年間がぐっと実り多いものになります。出費と割り切るより、投資と考えるのがおすすめです。

パートナー(配偶者・婚約者)の存在感が大きい

ざっくり3割ほどの学生が、パートナー(配偶者・婚約者など)を連れてMBAに入学します。そのため、パートナーの存在感はそれなりに大きく、MIT SloanではSO(Significant Others)と呼んでいました(学校によって呼び名は違うようです)。学校側も、パートナーを含めた学校生活やクラブ活動を積極的に推進しています。

先ほど触れたMBA生同士の旅行も、パートナー同伴で行くことが多くありました。大学の寮の一部は家族連れを優先的に入寮させてくれるところもあり、そこにはMBAとはまた別の、一大コミュニティが存在します。ちなみに私が住んでいた寮には、MBA生のほかに、パートナーと暮らすPhD(博士課程)学生やポスドクの方もいました。彼らと過ごす時間も多く、今でも連絡を取り合う仲です。MBA以外の人と親しくなると、外から見た「MBA生」の評価が分かりますし、ビジネスの世界とはまったく違うアカデミアの話も聞けて、非常に有意義でした。

パートナーであっても、MITのリソースを活用できますし、MITのメールアドレスも取得できます。クラブ活動や寮の運営でも、パートナーが要職に就くことが可能です。実際、私の妻は私たちが住んでいた800人が暮らす寮のVice Presidentを務め、寮内イベントの企画・運営を担っていました(寮内での知名度は、正直、私より妻のほうが上でした)。中には、パートナーがその後MBAなどの大学院に進学するケースや、卒業後に今度は自分がパートナーとしてMITに戻ってくるケースもありました。MBA留学は、学生本人だけのものではなく、家族も含めた一大コミュニティであり、パートナーがさまざまな活動に加わることに対しても、非常に寛容な文化があります。

助け合いの文化は、プライベートにも及ぶ

前回お話しした「Sloanies helping Sloanies」の精神は、就活だけでなく、プライベートの場面でも本当に力になってくれます。

一度、こんなことがありました。上の子が急に救急車で運ばれることになり、私と妻が交代で病院に付き添う必要が出てきたのです。その間、「下の子をどうしよう」と困っていたところ、同じ寮に住む、同じくらいの年齢の子どもを持つサウジアラビア人の同級生夫婦が、快く面倒を見ることを引き受けてくれました。しかも「忙しいだろうから」と、こちらは何もお願いしていないのに、ご飯まで作ってくれたのです。こうした助け合いに何度も救われました。家族で渡航する人にとって、この文化は本当に心強いはずです。

日本はまだ、世界から期待されている

最後に、日本人として少し嬉しかった話を。MBAには「Japan Trek」という大人気コンテンツがあります。これはおそらくどのMBA校でも開催されているTrekで、MIT Sloanでも毎年、日本人MBA生がオーガナイズし、運営しています。

私たちの代は80人規模のJapan Trekを主催しましたが、間違いなく、どのTrekよりも最速で枠が埋まりました。Waitlist(キャンセル待ち)も、とんでもない長さだったのを覚えています。この人気ぶりを見ても、コンテンツとしての日本には、まだ非常に根強い人気が残っていると感じます。

日本は今でも「テクノロジーが進んだ先進国」と思われています。社費派遣が多いためか、他国と比べて本国に戻る人の割合が高めなのですが、それに対しても「まあ、日本なら戻るよね」という認識が一般的です。こう認識される国は、正直かなり珍しいと思います。それだけでなく、トヨタのカンバン方式や新幹線の清掃など、日本の事例が授業の題材として登場することも意外と多いのです。経済は確かに停滞しているかもしれませんが、日本という国は、まだ世界から期待されている——そう感じました。だからこそ、私たちの世代がもっと日本を引っ張っていかなければ、というモチベーションにもつながりました。

【最終回】MBAは、学校におんぶにだっこでは終われない

5回にわたってお届けしてきた本連載も、いよいよ最後です。全体を通じてお伝えしたかったことは、突き詰めると一つ——「MBAは、学校におんぶにだっこでは終われない」ということです。

学校は、さまざまな形で必要なリソースを提供してくれます。ですが、それをどの場面で、どう活用するかは、すべて自分次第です。学校が、あなた一人のためにテイラーメイドのプログラムを用意してくれるわけではありません。そして、事前に何の準備もしていないと、いざ入学したとき「どのリソースを、どこで使えばいいのか」が本当に分からなくなってしまいます。入学してからは、一年があっという間に過ぎていきます。

戻れるならやっておく:MBA前の「自分向け」準備リスト

☐ 在校生に、授業や受験の話だけでなく「学校のカルチャー・空気感」まで踏み込んで聞く

☐ GMATに固執せず、GMATとGRE両方を試して、自分に合うほうを提出する

☐ エッセイの前に、他人と比較しない「自分だけに矢印を向けた自己分析」を行う

☐ 「MBAでこれだけは何があっても成し遂げる」というリストを作り、ブレない軸にする

☐ 在学中は、学生という立場を使い倒して、幅広い業界の人に早めに会いに行く

より自分に合った、自分の将来につながるMBA生活のために、受験のタイミングから「自分自身」に向き合うこと。それが、この2年間を最大限に活かす何よりのコツだと思います。この連載が、これからMBAを目指すあなたの一助になれば、これほど嬉しいことはありません。

関連記事:第1回から読む → 「入学前に勘違いしていた10のこと」(記事①)

関連記事:前回 → 「MBAの就活はネットワーキングが9割」(記事④)

よくある質問(FAQ)

Q1. MBA留学は学費以外に何がかかりますか?

A. 家賃や生活費に加えて、旅行やTrek、イベントなどの「授業外費用」が想像以上にかかります。ただし、その時間こそが一生の友人や本音の会話を生む、価値ある投資でもあります。

Q2. 配偶者や家族は帯同できますか?

A. できます。約3割の学生がパートナーを帯同し、家族連れ優先の寮やパートナー向けの活動も充実しています。助け合いの文化も根づいていて、家族連れには心強い環境です。

Q3. パートナーも学校のリソースを使えますか?

A. 使えます。MITのメールアドレスを取得でき、クラブや寮の要職に就くことも可能です。パートナーが主体的に活動することにも、とても寛容な文化があります。

本記事の内容は執筆時点の情報であり、現在の状況と異なる場合があります。渡航・手続等の際は、公式サイトや公的機関等で最新かつ正確な情報を必ずご確認ください。