中世のヴェネツィアには、信仰と相互扶助を目的とした、スクオーラ(Scuola)と呼ばれるグループが数多く誕生しました。
ヴェネツィアのスクオーラの中で、当時最も裕福で、ヴェネツィア共和国崩壊後も特別に存続が許され、現在も尚活動を続けているスクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコをご紹介します。
スクオーラ(Scuola)とは
スクオーラは、イタリア語で「学校」などの「教育が行われる場所」を意味します。
英語の”School”と同じ語源です。
中世のヴェネツィアにおいて、信仰と相互扶助を目的とし、キリストや聖母マリア、守護聖人の名において、一般教徒か集うグループが数多く作られました。
これらの組織や集合所は、スクオーラ(信徒会)と呼ばれ、共通の職業や出身地により団結した一般市民が所属していました。
当初グループの会員向けに行われていた福祉サービスは、後に全市民を対象とするようになり、18世紀後半にヴェネツィア共和国が崩壊するまで、ヴェネツィアにおいて重要な役割を果たしていました。
スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコ(Scuola Grande diSan Rocco)について
スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコとは
スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコは、中世に世界中で猛威を振るっていたペストに対する守護聖人、サン・ロッコ(聖ロッコ)を信仰するスクオーラで、15世紀に生まれました。
当時のヨーロッパ人口の約3分の2が死亡したとも言われているペストの流行はヴェネツィアの人々を恐怖に陥れました。
ペストの沈静を祈り、スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコに集まった市民は増え、16世紀には、ヴェネツィアで最も裕福なスクオーラへと急成長しました。
1806年のナポレオンの法令によりスクオーラは廃止されましたが、スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコには例外が認められ、唯一存続が許されました。
現在も、スクオーラには約300人以上の市民が所属しており、引き続き慈善活動を行ったり、建物内の芸術品の管理を行ったりしています。
開館時間
年末年始や復活祭の時期に休館日があるものの、定休日はありません。
開館は、9:30~17:30で、入場は閉館の30分前までです。
行き方
スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコは、ヴァポレットのS.Tomaを下船して徒歩5分の場所にあります。
サン・マルコ広場から、リアルト橋を通っていけば、徒歩のみで30分で行くことも出来ます。
入館料
1人10ユーロ。
(26歳以下の学生及び65歳以上は1人8ユーロ。)
ただし、家族が同伴する18歳以下は無料になります。
チケット購入の際に、パンフレットが貰えます。
日本語のものもあるので、ぜひ手に入れておきましょう。
このように、ティントレットの絵画について詳細に書いてあるので、とても分かりやすいです。
スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコ内部の様子
「ティントレットの美術館」とも言われるほど、ティントレットの作品が多く展示されています。
ティントレットは、スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコで、20年以上に渡り従事し、聖書を題材とした絵画を数多く残しました。
ティントレットによって描かれたものは油絵だけではなく、天井画もあります。
ずっと天井を見上げていると首が疲れてしまうので、このように鏡を使ってじっくり見学するのがオススメです。
1階ホール(Sala terrena)
薄暗いエントランスホールの両サイドにはティントレットの絵画が合計で8点展示されています。
これらの絵は聖母マリアの生涯(受胎告知から聖母被昇天)を題材にしたものです。
この日は撮影が行われていました。
階段 (Sala Terrena)
2階の大広間へは階段を上って向かいます。
1つ目の階段はシンプルですが、この角を曲がると、
このように華やかなスカルパニーノ設計の大階段が出てきます。
FumianiやNegriなど、ティントレット以外の画家による作品が飾られています。
2階大広間(Sala Capitolare)
思わず声が出そうになるほど豪華な大広間の天井には、21点のティントレットの絵画が並びます。
数の多さと壮大さに圧倒されますが、首が疲れないように適宜鏡を利用しながら見学しました。
このように、鏡には少し拡大されて映るようになっているので見やすいです。
天井には「マナの収集」や「イサクの犠牲」、「天使に食べ物を与えられるエリヤ」などが、壁には「ゲッセマネの畑での祈り」、「最後の晩餐」など、全てティントレットの作品です。
反対側の天井も、全てティントレットの絵画です。
「岩から水を湧き出させるモーゼ」や、「アダムとイヴ」、「永遠の父のモーゼへの出現」など。
大広間の横には小部屋があり、この部屋のみ見学することが可能でした。
入ることは出来ないので、大広間から見るだけでしたが、とても美しかったです。
接客の間(Sala dell’Albergo)
接客の間(Sala dell’Albergo)は、スクオーラにおいて、会議などが行われていた重要な部屋で、2階大広間の奥にあります。
豪華な装飾の施された天井には、ティントレットの「栄光の聖ロッコ」を囲むように、「寓話象」が配置されています。
部屋の奥には、とても大きなティントレットの作品、「キリストの磔刑」が飾られています。
スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコの見学を終えて
教会のようなのに教会ではない、スクオーラの代表であるスクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコを見学し、豪華な装飾に秘められた、当時の人々の空腹や渇き、ペストを始めとする病気からの解放への願いを感じることが出来ました。
ヴェネツィアに行かれた際はぜひ訪れてみて欲しい場所です。
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